こんにちは。言語聴覚士の畑山です。
冬の暴れ大将軍が日本海の各地に大雪の災害をもたらしており、比較的に穏やかな寒さの大阪で「寒い、寒い」と言うのも罰が当たりのような気がします。

さてこの時期になると感染病予防で街中にはマスクをする人が溢れています。特に私たち医療従事者は「感染者になっても、伝染者になってはならない」という教訓があるようにマスクをする機会が多くなります。しかしながら前職の病院勤務での話ですが、よく患者様から「療法士がみんなマスクしているからロボットみたいで怖い」「何をアドバイスしているか分からないから不安」とご意見を頂くことがありました。そこで巻き起こったのが『マスク論争』です。医療従事者としての教訓に習いマスクをするべきか。はたまた他人と接する礼儀として表情をあらわにするべきか。とても悩ましい問題です。

寒さが厳しくなると同様に感染病の猛威も強くなり、他人に迷惑をかけないという観点からもマスクをすることが優先されるべきだと思いますが、今日は敢えて一人のしがないコミュニケーションのプロ、言語聴覚士として「マスク否定派」の立場から一言書かせていただきたいと思います。

私たちは主に言葉を使ってコミュニケーションをしていますが、とある研究では言葉の内容よりも話し手の表情、仕草、声色、声質の方が印象に残りやすいという結果が出ています。たしかに私たちは話し手の話している内容以上に話しているときの表情や仕草を気にしており、例えば話し手が笑顔で否定的なことを言っていたり、引き摺った顔で肯定的なことを言っていたりすると「あれどっちなの?」と混乱を招いてしまいます。だからマスクで表情を隠すことは、聞き手にとって少なからず不快な印象を与えるのは間違いないと思います。

「相手の表情を見て心情を読み取る、物事を判断する」という能力は私たちが生まれながら持ち合わせている原始的な能力で、言葉のわからない赤ちゃんもまずは母親の表情で状況判断し、言語発達につれて言葉という道具でコミュニケーションをします。高齢者も認知機能が緩慢になってくると言葉の内容よりも話し手の表情などで物事を判断します。よってコミュニケーションの観点では、マスクで聞き手の原始的な能力を遮断しながら、より良い人間関係を構築するのは困難だと思っています。

けれどもマスクをせずに感染菌を周囲に拡散するのも道徳に反すると思います。そういう時はマスクで表情を見せない分だけ聞き手の聴覚に良い刺激を与えることをおすすめします。心地いい声、明るい声、よく通る声、響く声、柔らかい声、力のある声。

よくマスクをつける機会がある方は是非これを心掛けてみると、ちょっと変わった明るい世界が見えてくるかもです。

言語聴覚士 畑山